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megamouthの葬列

長い旅路の終わり

SIerについて僕が知っていること

getlife.hateblo.jp

という記事があって、paizaお得意のポジショントーク煽りにSIerで頑張ってるオジさんがブチ切れといった構図の話なわけだが、元のPDFすら読まずに

イケてる環境のWEB系の労働生産性がイケてないSIerのたった三割しかない件 - プロマネブログ

生産性についてはSIerの上流だけを見ればそらそうだろう。だって、下流は弱小web屋にすら話が回って来るほどの低単価、長時間労働なわけで、このグラフ単なる元請け、下請けの生産性比較になってないか?

2016/10/24 09:59
b.hatena.ne.jp

とコメントしたところ、けっこうスター貰ってしまった。そして自分で言っといて大変申し訳無いのだが、このコメントは的外れだ。

個人的には、私のブクマより

イケてる環境のWEB系の労働生産性がイケてないSIerのたった三割しかない件 - プロマネブログ

乱暴な分析だなぁ… ソフトウェア製造の生産性と業種毎の労働生産性はまるで違う話だしpaizaの話しは前者でしょ。女性の話に関してはWeb系の皮をかぶったSIerも結構あるからハズレくじを引いたかなと言う印象。

2016/10/24 12:56
b.hatena.ne.jp

のブクマが端的にこのエントリを物語っていると思う。

というわけで、このエントリには、これ以上思うところはあんまりないのだが、いい機会なのでWeb屋から見たSIerの話を少ししておこうと思う。

Web屋とは何か?

あんまりこのブログに私は自分の素性を書いた覚えはないが、私は生まれも育ちもWeb屋であり、基本的にはWebシステムのことしか知らない。だからといって私はいわゆる「Web系」の人間というわけではないのだ。

よく考えて欲しいのだが、例えば電通あたりがグロス1億あたりで受けたCM+WebサイトのWebサイトデザインをしている会社は広告業界に属するのか?受託系Web業界に属するのか?

はたまた基幹システムとRPCしているコールセンター向けWebアプリケーションを構築しているWeb屋はSIerに属するのか?それともこれも受託系Web業界といえるのか?

逆にEコマースサイトのバックエンドにあるロジスティクス(流通系)処理を構築している業者は「Web系」だろうか?それともSIerだろうか?


つまりWebという存在は、現代の情報ネットワークシステムに付随する全ての業種に広く浅く偏在しているのであって、一言で「Web系」と分類できるほど、事は簡単ではないのである。

世の人が「Web系」と言うと、まず想像するのが、GoogleFacebookといった、サービスをWeb上に展開してBtoCしている会社だと思うのだが、企業数の話で言えば、国内において、受託開発を一切せずにサービスだけをやっている会社など、かなり珍しい部類である(大手と中小の違いはもちろんあるが)

pixivだって、昔は受託開発をしていたし、この、はてなだって人力検索だけやって生きていこうとしたら資本金の300万を半年足らずで溶かしきって死にかけるのが、この国のWebサービス業界なのだ。

なので、当エントリについては、「Web系」企業について以下の定義を提案したい。

  • A.純粋Webサービス企業
    • 基本受託開発をしない、サービス提供のみで食っている会社
  • B.受託系Web制作会社
    • Web制作しかしないが、基本受託開発のみを行う会社
  • C.サービスもやっているWeb制作会社
    • 受託Web制作の片手間にサービスを展開している会社


で、割合で言うと、Aが1%程度、Bが60%、Cが30%、その他の有象無象(Web制作を内製に切り替えたEコマース企業など)が残り、と言った印象だろうか。

余談だが、求人サイトでWeb系の求人を見ると、やたら自分とこでサービスを展開していることを喧伝する企業が多いので、Cが60%ぐらい、Aも10%はありそうな気がするだろうが、それは求人活動において「Webサービスを(も)やっている」という事実がWeb系に夢を持って飛び込まんとする求職者に魅力的に映ることを知っているからそう書いているだけで、実際には、社長が昔思いつきで始めた儲かりもしない自社サービスなどほぼ放置で、受託に力を入れている企業ばっかりだったりするので、転職者は注意すべきである。

さて、こういう話なので、年収100万円代大学中退、ヒキニート中年プログラマである私も相応に受託開発をしてきた。クライアントが広告業界だったこともあるし、名も知れぬ旅館だったりもするし、SMクラブだったりもするし、マルチビジネスやってる怪しいオジさんだったりもしたが、誰もが知っている最大手SIerの4次請けぐらいになったこともある。今日はその話をちょこっと書いて終わりにしようと思う。

30人月(人日6万換算)ぐらいの仕事を一人でやった話

ある日、家で飲んでると馴染みのブローカー紛いのことをしているオジさんから電話がかかってきた。

「ちょっとお硬い仕事やが、やるか?」内容を聞くと、公共団体がエンドクライアントで、規模は大きいが、全てWebで完結する案件であり、まあできなくもない。

「ちなみに競合はあるんか?」と私が尋ねると、オジさんは某大手プロバイダの名前を出した。

「そこは、2億言うとる。どや?」
「まああそこやったらそうやろな。わしやったら500万ぐらいでやったるけどな」
「よっしゃ、3000万ぐらいで見積出すわ」

そうして、私はまた酒を飲んで、その頃はまだあったYahooチャットでメンヘラ釣りなどを楽しんでいると、春先にオジさんからまた電話がかかってきた

「決まったで。納期は年度末や。頼むわ」

はて、何のことだったか、と思ったので、私はまた、Yahooチャットでメンヘラと遊んだり、当のメンヘラから「会いにこないと死ぬ」と自殺予告を受けてさっくり警察に通報したりしていた。たまにオジさんから、Excel方眼紙で書かれた設計書のような設定通知みたいなのがまわってくるので、適当に書き込んで返送する。仕事といったらそれぐらいであり、たちまち時は過ぎていったのであった。

夏頃だったろうか、オジさんからまた電話がかかってきた。

「どのへんまでできとる?」

「なんもできとらんけど?」

「そら困るわ」

「やけどやる気がせんもん。しゃあないやないか」

「わしの元請けは○○(某大手SIerの子会社)やねんけど、このままやと担当者のクビが飛びそうなんやわ」

「クビ飛んでまうんかいな。そら寝覚め悪うなるわ」

というわけで、オジさんと私は協議して、毎朝オジさんの車に迎えに来てもらって、オジさんの会社に出勤することになった。

納期まで半年を切ってしまっているので、私は、とりあえず、UIライブラリとアイコン集を5万ほど自費で購入して、昔作ったシステムをそのままコピーし、API部の改造を始めた。真面目にHTMLテンプレートを書いたり、セッション管理などしていると間に合わないので、SPA(Single Page Application)にしてやろうと思ったのである。

書いているとすぐ飽き始めたので、UIライブラリのテーマを自作したり、有名になり始めたgitを使ってみたり、JSの疑似モジュール化をやってみたり、書き直したらそのモジュールだけリロードするようなシステムを組んだりしているうちに冬頃になった。恐ろしいもので、真面目にやっていたので、システムは大まかに動き始めていた。

当時、花輪和一の「刑務所の中」を読んでいた私は、「刑務作業ってこんな感じやろか。せやったら一生刑務所でもええなあ」などと思いながら、毎日昼飯を食うと近くの公園で昼寝をするという日課を過ごしていた。

ちなみに自殺未遂をしたメンヘラは警察病院で息を吹き返したらしく、「お前のせいで死に損なった!」と半狂乱の電話がかかってきたので着拒にした。



「そろそろ、女手集めるか」

オジさんは言った。そう言えばデータ移行とテストなんていう項目もあったのだった。
オジさんはほうぼうに電話をかけ始めた。1週間後には在宅、出社組合わせて5人ほどのオバさんが集まった。

私は、新システムをとりあえずデータ入力可能にしたうえで、彼女らにアカウントを渡した。オバさん軍団は実に効率的にデータ変換作業を人力で行いはじめた。
もちろん、所々不具合は起こった。とはいえ、作っているのは私一人であるので、原因はすぐにわかるし、修正もすぐできる。
そうやって、データ移行とテストとバグフィクスは粛々と進んでいった。

年が明け、お披露目になった。正直な話、夏頃に姿形もなかったシステムが出来ているということに、エンドクライアントも元請けも半信半疑だったが、システムがまともに動いていたので、皆驚いていた。私も驚いていた。驚いていなかったのはオジさんだけで、内心はヒヤヒヤだったにせよ、まあこういうところで、自信満々なのが、このオジさんの処世術なんだろう、と思った。帰ってからなんとなく、買ってきたライブラリ以外のコード行数を数えてみると8万行だった。よく書いたものだと思う。

仕様書や、その他もろもろのExcel方眼紙ドキュメントはオジさんと元請けのクビがかかった担当者が揃えてくれていた。こうして納品は遅滞なく行われた。


納品後、おじさんからは春先に半金が振り込まれた

「あとは分割や。どんなけ手間かけさせた思うとんのやお前は」

私は特に文句を言う筋合いもなかったので、それを承諾した。そして、金が入る度に酒を買った。


これが、私が某大手SIerと仕事をした顛末である。この話を信じても信じなくてもあなたの自由だ。だが、往々にしてSIerの作るシステムというのはこのように作られているということを、少なくとも私は知ることができたのである。