2026-01-01から1年間の記事一覧
来ないな、と思った。 班長が、である。 町内会費を集めに班長が来ない。 例年ならドアポケットに「町内会費」と書かれた封筒がいつのまにか入っているから、それに1200円を入れて、封筒に書かれた班長の号室のドアポケットに封筒ごと投函する、ということで…
はじめまして。面接官をAIがなされることもあるんですね。少々とまどっておりますが、よろしくお願いします。自己紹介をさせていただきます。大学を辞めて25年、Webを中心に実績を積んできました。とはいっても、キャッチアップもしておりまして、最近ですと…
四天王寺で定期的に行われる古本市に行った。境内に古書店のテントがたくさん張られていて、その中に即席の書棚が木々のように生えている。昨日降った雨がテントの足元に水たまりを作っているから、棚を移動するたび、水を跳ね上げないようにそっと足を動か…
岡本喜八の「大誘拐」を初めて見たのは小学生の頃だった。まだ映画をテレビで放送していた時代で、夜のロードショーで見たのだ。 映画の中で、老婆が指を一本立てる。「100億や」。緊張感が破裂して、滑稽さに踏み込む。その瞬間のことを、よく覚えている。…
入社式は四月の第一月曜日に行われた。本社ビルの十二階にある大会議室には、今年入社した二十三名が並んで座っていた。新品のスーツは全員微妙にサイズが合っていない。今思えば私の隣には高木がいた。その向こうに間宮さんがいた。私の斜め前には山本がい…
ある朝、俺はなにか気がかりな夢から目をさまして、自分が寝床の中で一本のチューブに変わっているのを発見した。俺はチューブだ。AIに投げて、返ってきたものを受け取って、また投げる。ロジックの本質は俺をすり抜けて、構築中のシステムとチャットウィン…
大手ECサイトをスクレイピングするプログラムをClaudeCodeに書いてもらいました。とても便利なので公開したいのですが、友人のプログラマに相談すると「叩かれるからやめておけ」と忠告されました。AIも同意見のようです。正直、基準も理由もよくわかりませ…
東京から来た業務委託の若者が、開口一番こう言った。「大阪オフィスは元気がないっすねー」私は返事に困った。元気がないというより、午前10時の静かなオフィスで各自が黙々と仕事をしているだけだったから、何と答えればいいのかわからなかった。「つまん…
システムを納品した。詳細は書けないが、物流の現場に導入する業務効率化システムみたいなものだ。ギリギリの数のトラック、安い運賃、運行計画の担当者は毎日5時間以上、10MBのExcelファイルをいじくりまわしている。上手く行けばそれを終わりにできるシス…
46歳になって、お前のことを――俺の生まれなかった子のことを考えた。生まれかけた命をどうこうする話ではない。そういう話が書けないというより、俺の人生には最初からその入口がなかった。入口がなかった理由は、いくらでもそれらしく言える。病気、金、仕…
ビジネスに負けた、という言い方は便利すぎると思う。何に負けたのか説明できないとき、最後に置ける単語だからだ。提案して音沙汰がない時、コンペで選ばれなかった時、いろいろ要因を洗っても落ち度が見つからない時に、誰かが言う――「ビジネスに負けた」…
帰りの電車でドア横に立つ。幹線道路のヘッドライトが地平まで繋がっている。車は帰っていく。僕はただ見ている。いつのまにか本が読めなくなっていた。読めないのに本屋には行く。意味がわからないと思うけど、僕にもわからない。たぶん習慣だ。かつて本屋…
お金、それも給料の話は、あさましい、ということになっている。婚活パーティーでもなければ隣の席の人間がいくら貰っているか堂々と聞くこともできない。かつてGoogleで、自分の給料を全社員が見られる共有スプレッドシートに書き込み、公開を促した女性が…
商談サイトに掲載されている案件をクロールして自動的にAIで提案書を作成、提出するという人の話を聞いて、どうにも反応に困って「そのメンタリティが素晴らしいですね」と答えたのだが、どうも先方の望む答えではなかったようで、苦笑いされてしまった。「…